前途無難

安全保障関係の記事・東南アジアのテロ情勢など

フィリピン主要事件(2018年4月8日~14日)

HEADLINES
1. ミンダナオ島中西部で国軍が大規模掃討作戦
2. ルソン島南東部で「新人民軍」と国軍が衝突
3. ラグナ州サン・パブロ市で誘拐犯と警察が銃撃戦

 

1. ミンダナオ島中西部で国軍が大規模掃討作戦

2018年4月9日(月)、フィリピン軍は、ミンダナオ島中西部のマギンダナオ州において、バンサモロ・イスラーム解放戦線(BIFF)に対する大規模掃討作戦を開始した。
同日から地上作戦を開始し、10日には航空兵力による空爆も実施、11日(水)までに13人を殺害、拠点2か所を制圧した。
制圧拠点からは即席起爆装置(IED)・ライフル20丁・火薬100kgなどが押収され、BIFF側の9人が降伏した。
戦闘開始に際し、付近の住民400世帯が軍の支援で退避したため、民間人犠牲者は出なかった模様である。

BIFFは、モロ・イスラーム解放戦線(MILF)から分離した、イスラーム主義的な傾向の強い分離独立組織で、最近は一部の勢力がISILに接近をはかるなどの動きがある。
しかし、2017年夏に発生した南ラナオ州マラウィ市でのISIL系武装組織(マウテ・グループとアブ・サヤフの一部)による市街地占拠事件にはかかわっていない。
現在はほぼマギンダナオ州に活動が限定されており、実質的な規模はかなり縮小しているとみられる。

もっとも、ISILに関係するグループの活動がミンダナオ島で止んだわけではない。
たとえば、2018年3月10日にスルタン・クダラート州パリンバン(Palimban)で拘束されたインドネシア人の男が、ミンダナオ島でISILに忠誠を誓う組織に爆弾を製造・提供するなどしていたことが明らかになっている。

 

2. ルソン島南東部で「新人民軍」と国軍が衝突

ルソン島南東部のビコル半島では、フィリピン軍と武装勢力との衝突が連続した。
これらの武力衝突共産党系軍事組織の「新人民軍」(NPA)によるものである。

まず、2018年4月8日(日)に南カマリネス州ラゴノイ(Lagonoy)で、国軍とNPAが衝突し、NPA側の1人が死亡した。
衝突後の現場から、M-14ライフル1丁が押収された。
2日後の4月10日(火)にも同じく南カマリネス州バトー(Bato)で、NPAと国軍が衝突した。
この衝突によりNPA側の3人が死亡、5人が拘束された。

NPAの政治部門は、フィリピン政府との和平協議の用意があるとしているが、衝突事件の続発は必ずしも和平路線で一本化されているとは言えない現状を示唆している。

 

3. ラグナ州サン・パブロ市で誘拐犯と警察が銃撃戦

2018年4月10日(火)、ラグナ州サン・パブロ市で、誘拐事件の容疑者集団と警察が銃撃戦となった。
この事件により、容疑者側5人、警察1人が死亡した。
また、救出対象であった誘拐被害者ならびに警察4人が負傷した。

事件の発端となったのは、前日の4月9日(月)にケソン州カンデラリア(Candelaria)で、ビジネスマンの男性1人が、家から武装した集団に拉致された事件である。
家屋には荒され、貴重品などが強奪された形跡があった。
ビジネスマンは地域で知られた資産家だった一方、薬物取引グループとの関連もうわさされていた。

カンデラリアやサン・パブロはマニラからもほど近いものの、薬物がらみの銃撃事件や銃犯罪が後を絶たない。