前途無難

安全保障関係の記事・東南アジアのテロ情勢など

フィリピン主要事件(2018年4月29日~5月5日)

HEADLINES
1. 地方選挙に関する候補者らの殺害続く
2. 過激派組織アブ・サヤフが分裂か
3. ネグロス・オリエンタル州でジャーナリスト殺害

 

1. 地方選挙に関する候補者らの殺害続く

 2018年5月14日(月)に、フィリピンでは地方選挙が予定されている。
この地方選挙を前に、当週までの3週間で、関係者少なくとも22人が殺害された。
5月5日(土)にフィリピン国家警察が発表したところによると、22人のうち、12人がミンダナオ地方、4人がルソン地方、4人がビサヤ地方で殺害された。
別の観点では、現職候補者が12人、2人が首長の新人候補、6人が関係市民である。

 前週までで少なくとも選挙関連の暴力により11人が死亡しているため、1週間で11人が殺害されたと分かる。
今回の地方選挙が行われる対象は、村落(Barangay)の首長と、青年議会(Sangguniang Kabataan・若年層に関する政策の決定権を持つ)の議員である。

 

2. 過激派組織アブ・サヤフが分裂か

 過激派組織アブ・サヤフの最高幹部のひとりであるヤシル・イガサン(Yasir Igasan)が死亡し、過激派組織アブ・サヤフが分裂した可能性がある、とフィリピン国軍が明らかにした。

 発表によると、イガサンは昨年10月に脚部の怪我がもとで死亡、その後、組織が後継者をめぐり分裂闘争に至った可能性がある。
投降したイガサン配下の戦闘員から聴取した情報に基づくと国軍は発表している。

 ヤシル・イガサンは、スールー州ホロ(Jolo)を拠点とするアブ・サヤフの幹部で、1970年代生まれとされるため、年齢は45歳前後ということになろう。
南ラナオ州マラウィ市のイスラム系教育機関に学び、10代で早くもアフガニスタン渡航ソ連軍との戦闘に参加した。
フィリピンに帰国したのち、2007年にはアブ・サヤフの精神的指導者に就いたとみられていた。

 イガサンが確実に死亡したか否かについて、国軍は「調査中」との慎重な姿勢をみせているが、事実であれば、そもそも退潮気味のアブ・サヤフに致命的な打撃となる。
一方で、組織が分裂した結果として、小規模な過激分子が一時的に活発化することも、一般論としては考えられる。


 ところで、4月30日(月)に米国財務省は、ミルナ・マバンサ(Myrna Mabanza)という女性を、ISILの活動家としてテロリスト一覧に登録したと発表した。
アブ・サヤフの軍事指導者イスニロン・ハピロン(2017年に死亡)らと協力関係にあった、と指摘している。

マバンサは、バシラン州を拠点としており、かつて教師として勤務していたとされる。
財務省担当者によると、マバンサはISILの資金的ネットワークの一部で、東南アジアの過激主義者をつなぐ「仲介者」のような役割を果たしていた。

 

3. ネグロス・オリエンタル州でジャーナリスト殺害

 ネグロス・オリエンタル州のドゥマゲテ(Dumaguete)で、現地のラジオ放送局に努めるジャーナリストが、複数個所を銃で撃たれて殺害された。
犯行の背景は明らかでないが、フィリピンでは、犯罪組織がらみの事件や薬物取引などを報道するジャーナリストが、しばしば殺害される 。

 ドゥテルテ大統領は、この殺人事件について、直接に捜査を命じた。
大統領直轄の「メディアの安全にかかわるタスクフォース」は、5月2日(水)、報道に関する業務遂行に関して殺害された可能性が高い、と指摘している。