前途無難

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バングラデシュで世俗派ライター殺害(2018年6月11日)

バングラデシュで、世俗派ライターが射殺される事件が起きた。

同国では2014年頃から、イスラーム主義的な政治運動や過激主義者の活動を批判する「世俗派」の人々に対する殺害事件が続いていた。
2016年7月にダッカで、日本人も犠牲となったレストラン襲撃事件が発生して以降は、それ以前ほどの頻度ではなくなったものの、今年に入って少なくともこうした事件は2回発生したことになる。

 

今回の事件は、6月11日(月)にダッカの南部郊外にあるムシンガンジ県カカルディ(Kakaldi)で発生した。
殺害されたのは著名な文筆家であるシャーザハン・バクチュー(Shahzahan Cachchu)で、銃による犯行だった模様だ。
報道によると、バクチュー氏は同日夕方、薬局で友人と会っていたところ、店の外で2台のバイクに分乗した5人組が粗製爆弾(crude bomb)を炸裂させた。
爆発によって店内がパニックになったところを、5人組が氏を店から引きずり出し、射殺した。
バクチュー氏は文筆業のほか、出版社経営や、共産主義政党の活動にもかかわっていた*1 *2。

 

バングラデシュでは、今年3月にも、北部シルヘット(Sylhet)にあるシャージャラル科学技術大学で、大学教師・科学ライターであるザファール・イクバル(Zafar Iqbal)氏が、学生に刺される事件が発生している。
世俗派の襲撃を行っているのは、非合法政党「イスラーム協会」(Jamaatul Islami)の青年組織が過激化したアンサール・イスラーム(Ansar Islam)*3という組織によるものとされる。
命令系統を備えた組織というよりも、マドラサ(神学校)などでゆるやかなつながりに依拠したグループとみられているものの、刃物や粗製爆弾によって、いわゆる「ローンウルフ型」に近いテロを起こしており、治安組織の最大の摘発対象のひとつである。

 

*1 The Print, 12 June 2018, Prominent secular writer, publisher shot dead in Bangladesh, https://theprint.in/politics/prominent-secular-writer-publisher-shot-dead-in-bangladesh/69086/
*2 Dhaka Tribune, 11 June 2018, Publisher shot dead in Munshiganj, https://www.dhakatribune.com/bangladesh/nation/2018/06/11/publisher-shot-dead-in-munshiganj
*3 アンサルッラー・バングラ・チーム(Ansarullah Bangla Team)と呼称されることもある。