前途無難

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ミャンマー国軍がスーチー政権に対しクーデタを威嚇

 

 タイのバンコク・ポスト紙は、6月23日(土)、ミャンマー国軍によるクーデタの可能性があった、とする記事を掲載した。

 報道によると、およそ2週間前に実施された政府と軍の「安全保障会議」以降、アウンサン・スーチー国家顧問と、ミン・アウン・ライン陸軍総長との関係は、日に日に悪化していた。
特にラカイン州ロヒンギャ難民などをめぐる政治解決についてスーチー国家顧問率いる民政政府が実施できていないことに軍は不満を募らせており、状況をコントロールできなければクーデタもありうると威嚇した、という。
記事本文は、イギリスのBBC報道編集であったラリー・ジェイガン(Larry Jagan)氏によるもの*1。

ジェイガン氏によると、当面の危機は国連の担当官によって回避されたとのことだが、クーデタのための動員の意図と能力を示したという記述の意味するところは重い。

 

 実際に、スーチー国家顧問率いる民政政府の立場には難しいものがある。
国内の少数民族に対して和平を優先すると、少数民族側の武装勢力が交渉を有利に進める材料を得るために、短期的な軍事攻勢に出る傾向がある。
他方、これを軍事的に抑え込むために軍事力を投入すると、国際的な注目を受けている中で、批判を浴びやすい。
さらに、国軍への統制権限が実質的に政府に与えられていないため、国際的要求に従って軍を制限的に利用することも難しい。

 この「手詰まり」状況下に追い込んだ責任の一端は国軍にあるわけだが、それにもかかわらず、政治的不手際を理由に「クーデタ」を威嚇するということは、これを予告することで正当化する意図があるのではないか、とも考えられる。
ミャンマーの政治動向は、非常にセンシティヴな状況に陥っており、「唐突に」軍事政権に戻るようなことが、起きるのかもしれない。

 

*1  Bangkok Post, 23 June 2018, UN envoy averts possible military coup in Myanmar, https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1490754/un-envoy-averts-possible-military-coup-in-myanmar