前途無難

安全保障関係の記事・東南アジアのテロ情勢など

タイ主要事件(2018年4月29日~5月5日)

HEADLINES
1. バンコクなどで反軍事政権デモ
2. 深南部ヤラー県で爆弾テロの準備か
3. 痩身のための「薬品」により死者

 

1. バンコクなどで反軍事政権デモ

 タイ国内各地で、民主化要求デモなどの街頭行動が相次いだ。

 まず、4月29日(日)に北部のチェンマイ市で、宅地開発に反対する集団約1,250人が抗議集会を行った。
同地での集会としては、2014年の軍政による政権掌握以降最大級のものとなったが、あくまで平和的に行われた。
理由の一端は、政治的なスローガン等を一切掲げず、あくまで開発反対を謳ったため。
もっとも、開発を容認した政府への批判が含まれていたと見られている。

 バンコクでは、5月2日(水)にプラナコーンにある国連施設周辺で、民主化を求める集会が開かれた。
これは、早期の民主化を求める「正しい社会のための人民運動」(People‘s Movement for Just Society)のメンバー900人によるもので、座り込みなどを行ったが、警察官300人に排除された。

 また、5月5日(土)には、バンコク市タンマサート大学(Thammasat University)でも民主化デモが発生した。
およそ500人が集まり、軍政が5年目を迎える5月22日までに、選挙実施の確約などを行うよう求めた。

 2014年に実質的なクーデタで政権掌握した軍政は、選挙実施と民政移管を宣言しているものの、延期措置を繰り返している。
そのため、大学やショッピングモールなどでしばしば民主化要求デモが開かれている。
現時点では、集会も平和的なものにとどまり、暴力的な応酬にはなっていない。
しかし、鎮圧部隊との予期せぬ衝突も考えられ、こうした現場に近寄らない、すぐに立ち去る、といった対策やシミュレーションはしておくほうがよいだろう。

 

2. 深南部ヤラー県で爆弾テロの準備か

 5月2日(水)、深南部のヤラー県で、カンボジア人男性が刺されて死亡し、バイク1台が盗まれる事件が起きた。
警察はこれをテロの準備と見ており、盗まれたバイクが爆弾テロに使用される恐れが高いとして、追跡ならびに捜査を進めている。
タイ深南部では、2018年に入って4か月のあいだに98回のテロ事件が発生しており、52人が死亡・116人が負傷している。

 ところで、4月30日(月)に、同じく深南部のパッターニー地方裁判所で、2016年に発生した爆弾テロ事件に関する裁判が開かれ、6人に死刑判決、3人に終身刑、1人に懲役40年が言い渡された。
被告は、パッターニー県で2016年6月から12月にかけて5件の爆弾テロに関与した容疑により、訴追されていた。
ただし、タイでは過去8年間死刑の執行はなされていない。


3. 痩身のための「薬品」により死者

 「リン」(Lyn)という名称の、痩身のための「薬品」により死者が出ていたことが、4月30日(月)までに判明した。
痩身剤「リン」は、最近だけでも4件の死亡例が生じていた。
当局が調査に乗り出したところ、複数の危険な化学物質が含まれていることが判明、チョーンブリ県在住の男性らが拘束された。
「リン」は、パトゥム・ターニー県の"Food Science Supply Service Co"が製造し、"Ekakkharin Co"が販売していた。

 タイに限らないが、市販のサプリメントや化粧品などの、特に安価なものには危険な化学物質や非衛生的な原料が用いられていることが少なくない。
口にするもの、肌に直接つけるものなどは、信頼できる店舗でのみ購入するなどの対策を、改めて喚起する事件である。